トランス脂肪酸が入っている食品とは?多い順に整理してみました
子供の頃の朝食と言えば、「ごはん」よりも圧倒的に「パン」を食べていました。
朝は、ごはんを食べる気がしなかったのですが、どういう訳かパンだと食べれるから不思議です。
焼きたてのトーストに紅茶の組み合わせは、当時の我が家の定番で、ほぼ毎日、食べていた記憶があります。
パンに付けるものと言えば、マーガリンまたはジャムでしたが、マーガリンが切れた時など、たまにバターを代用します。
しかし、バターは、マーガリンと違って硬くて塗りにくいので、いまいち人気がありません。味は、美味しいんですが・・・。
そういえば、母親にも、「バターは動物性で体に悪いから、植物性のマーガリンにしなさい」と、マーガリンを勧められていた記憶があります。
当時、我が家の朝食には、なくてはならない、ヘルシーな食べ物として食卓に君臨していたマーガリンでしたが、近年、そのポジションが危うくなってきています。
それは、
「トランス脂肪酸」
という物質のせいです。
マーガリンには、このトランス脂肪酸がたくさん含まれているのですが、このトランス脂肪酸が、体に悪影響を与えるので、バターよりも、体に良くないと言われるようになっているのです。
皆さんは、「トランス脂肪酸」のことは、ご存知でしたか?
実は、私はついこの間まで、このトランス脂肪酸についてあまりよく知りませんでした。
何となく体には良くない物であるとは認識していたのですが、「何がどう悪いのか?」
というところまでは、知りませんでした。
今回は、このトランス脂肪酸について、考えてみると共に、どのような食品に多く含まれているか、まとめてみたいと思います。
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トランス脂肪酸とは?
あぶらには、油と脂があります。
油 = 常温で液体のもの
脂 = 常温で個体のもの
に分けることが出来ますが、これらはまとめて
油脂
と呼ばれています。
この油脂は、
「脂肪酸」と「グリセリン」
という分子から出来ていているのですが、脂肪酸の中にも、
炭素の二重結合が無い 「飽和脂肪酸」
炭素の二重結合がある 「不飽和脂肪酸」
の二種類があります。
更に、不飽和脂肪酸には、
「シス型」と「トランス型」
の2種類があるのです。
この、トランス型の二重結合が一つでもある不飽和脂肪酸のことを、
トランス脂肪酸
と呼んでいます。
油・脂 → 油脂 → グリセリンと脂肪酸
↓
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
↓
シス型とトランス型
↓
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸には、天然に出来るものと、人工的に出来るものの2種類があります。
天然のトランス脂肪酸
牛や羊などの反芻動物は、胃の中の微生物の影響で、トランス脂肪酸が作られます。
従って、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中に微量のトランス脂肪酸が含まれています。
人工のトランス脂肪酸
常温では「液体」になっている油から「半固体」、「固体」の油脂を製造する時に、「水素添加」を行います。
この「水素添加」を行う時に、トランス脂肪酸が生成されます。
「水素添加」によって作られるマーガリン、ファストブレッド、ショートニングなどにトランス脂肪酸が含まれていて、これらを原料に作られたパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物などにもトランス脂肪酸は含まれます。
また、植物油を精製する過程においても、トランス脂肪酸が作られるため、サラダ油などにも微量のトランス脂肪酸が含まれています。
トランス脂肪酸の何が心配されているのか?
トランス脂肪酸を、長期間、多く摂り過ぎると、血液中のLDL(悪玉)コレストロールを増やして、HDL(善玉)コレストロールを減少させることが分かっています。
その為、トランス脂肪酸を摂り過ぎると、心臓病のリスクが高まることが懸念されています。
WHO(世界保健機構)とFAO(食料農業機関)では、心臓血管系の健康のためには、食事からのトランス脂肪酸の摂取量を抑え、最大でも、1日当たりの総エネルギーの1%未満にするように勧告しています。
2015年6月には、FDA(米国食品医薬品庁)は、トランス脂肪酸が多く含まれる、部分水素添加油脂は、食品として安全性が確認されているとは言えないとして、GRAS(従来から使われている安全が確認されている物質)のリストから削除しています。
そして、肥満や心臓病との関連が指摘されるトランス脂肪酸を、2018年6月までに食品添加物から全廃すると発表しています。
肥満や心臓病で悩むアメリカでは、トランス脂肪酸の禁止が待った無しという状況のようです。
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トランス脂肪酸に対する日本の見解
WHOや欧米諸国では、トランス脂肪酸への規制がある一方、日本の食品安全委員会では、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、WHOの目標としている一日当たりの総エネルギーの1%未満であり、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、規制をかける必要性は無いとの考えのようです。
〈トランス脂肪酸の一人当たりの平均摂取量〉
1日当たりの摂取量(g) 総エネルギーに占める割合(%)
〈日本〉
男性 0.680 0.3
女性 0.655 0.33
〈米国〉 5.8 2.6
〈EU〉
男性 1.2~6.7 0.5~2.1
女性 1.7~4.1 0.8~1.9
確かに日本人は、欧米人と比較して、トランス脂肪酸の摂取量は低いですね。
しかしこれはあくまで平均値ですので、日本人の中でも、欧米人並みに、トランス脂肪酸を摂取している人もいると思いますのでそういう方は、注意が必要です。
トランス脂肪酸が入っている食品は?
トランス脂肪酸は、ほとんどが人工的に作られたものが多いのですが、一体、どのような食品に含まれているのでしょうか。
多い順に、一覧表にまとめてみました。
(農林水産省 食品中の脂質およびトランス脂肪酸含有量より)
食品群 |
品名 |
脂質含有量(g/100g) |
トランス脂肪酸 |
穀類 |
味付けポップコーン1) |
36.8 |
13 |
乳類 |
コンパウンドクリーム |
27.9~41.1 |
9.0~12 |
油脂類 |
牛脂 |
100 |
2.7 |
油脂類 |
バター |
81.7~84.7 |
1.7~2.2 |
油脂類 |
ショートニング |
100 |
1.2~31 |
調味料・香辛料類 |
マヨネーズ及びマヨネーズタイプドレッシング |
70.6~79.3 |
1.0~1.7 |
乳類 |
生クリーム |
46.7~47.6 |
1.0~1.2 |
調味料・香辛料類 |
ドレッシング* |
0.1~51.9 |
0~0.88 |
菓子類 |
チョコレート |
28.4~46.2 |
0~0.71 |
乳類 |
乳酸菌飲料 |
0.05~0.18 |
0~0.003 |
油脂類 |
ファットスプレッド |
56.4~79.0 |
0.99~10 |
油脂類 |
マーガリン2) |
81.5~85.5 |
0.94~13 |
肉類 |
牛(ハラミ) |
29.6~59.4 |
0.79~1.5 |
調味料・香辛料類 |
カレールウ* |
32.9~39.9 |
0.78~1.6 |
油脂類 |
食用調合油 |
100 |
0.73~2.8 |
油脂類 |
ラード |
100 |
0.64~1.1 |
肉類 |
輸入牛(サーロイン) |
18.3~24.2 |
0.60~1.2 |
肉類 |
和牛(サーロイン) |
26.5~57.3 |
0.54~1.4 |
肉類 |
和牛(肩ロース) |
29.7~56.4 |
0.52~1.2 |
調味料・香辛料類 |
ハヤシルウ* |
26.9~36.2 |
0.51~4.6 |
肉類 |
輸入牛(肩ロース) |
9.0~25.9 |
0.51~0.88 |
乳類 |
ナチュラルチーズ |
22.1~36.8 |
0..50~1.5 |
調味料・香辛料類 |
ドレッシング |
33.3 |
0.49 |
乳類 |
プロセスチーズ |
22.7~35.3 |
0.48~1.1 |
菓子類 |
デニッシュ* |
13.4~22.4 |
0.41~0.98 |
菓子類 |
ショートケーキ* |
14.7~25.0 |
0.40~1.3 |
菓子類 |
スポンジケーキ |
19.9~23.6 |
0.39~2.2 |
菓子類 |
菓子パイ |
23.7~37.7 |
0.37~7.3 |
菓子類 |
アップルパイ、ミートパイ* |
17.1~25.7 |
0.34~2.7 |
肉類 |
輸入牛(肩) |
10.3~16.5 |
0.31~0.36 |
穀類 |
クロワッサン* |
17.1~26.6 |
0.29~3.0 |
乳類 |
アイスクリーム |
13.4~16.4 |
0.28~0.60 |
肉類 |
和牛(肩) |
17.0~34.1 |
0.28~0.55 |
菓子類 |
イーストドーナツ |
24.3~29.1 |
0.27~1.6 |
菓子類 |
シュークリーム |
15.3~28.2 |
0.26~0.93 |
肉類 |
牛(心臓) |
13.6~14.7 |
0.25~0.48 |
肉類 |
輸入牛(ヒレ) |
8.9~13.9 |
0.24~0.54 |
肉類 |
輸入牛(肩バラ、トモバラ) |
8.2~21.5 |
0.24~0.49 |
肉類 |
和牛(ヒレ) |
16.5~47.1 |
0.22~0.86 |
肉類 |
和牛(肩バラ、トモバラ) |
15.6~57.3 |
0.22~0.80 |
菓子類 |
クッキー |
14.0~32.6 |
0.21~3.8 |
穀類 |
乾パン |
6.3~8.3 |
0.18~0.64 |
菓子類 |
半生ケーキ |
30.5~32.2 |
0.17~3.0 |
穀類 |
菓子パン |
2.8~13.8 |
0.15~0.34 |
穀類 |
ロールパン* |
7.9~22.4 |
0.14~0.47 |
乳類 |
アイスミルク |
6.8~15.8 |
0.13~0.28 |
肉類 |
和牛(モモ) |
7.9~33.7 |
0.12~0.81 |
肉類 |
輸入牛(モモ) |
7.8~13.9 |
0.12~0.70 |
豆類 |
油揚げ |
19.4~32.5 |
0.12~0.22 |
肉類 |
牛(テール) |
7.2~15.6 |
0.12~0.13 |
菓子類 |
その他スナック(小麦粉主原料) |
15.9~32.9 |
0.099~1.3 |
菓子類 |
コーンスナック |
21.0~41.2 |
0.084~0.22 |
乳類 |
牛乳(種類別牛乳) |
3.0~5.0 |
0.069~0.13 |
豆類 |
がんもどき |
13.0~21.3 |
0.068~0.13 |
乳類 |
ヨーグルト |
2.7~4.1 |
0.065~0.11 |
菓子類 |
クラッカー |
12.0~27.2 |
0.049~0.81 |
穀類 |
食パン |
2.8~7.1 |
0.046~0.27 |
穀類 |
菓子パン* |
2.9~20.2 |
0.039~0.78 |
菓子類 |
ビスケット |
9.8~28.9 |
0.036~2.5 |
乳類 |
低脂肪牛乳 |
1.5 |
0.036 |
調味料・香辛料類 |
その他のソース* |
1.8~10.0 |
0.032~1.1 |
穀類 |
食パン* |
2.8~6.0 |
0.030~0.32 |
穀類 |
即席カップめん |
4.4~21.2 |
0.028~0.16 |
菓子類 |
ポテトスナック |
12.7~39.3 |
0.026~1.5 |
穀類 |
即席中華めん |
4.4~23.7 |
0.024~0.38 |
乳類 |
乳飲料 |
1.0~4.6 |
0.024~0.19 |
乳類 |
低脂肪乳 |
1 |
0.024 |
乳類 |
脱脂粉乳 |
0.9~0.9 |
0.022~0.026 |
肉類 |
牛(肝臓) |
4.5~5.3 |
0.021~0.054 |
肉類 |
牛(タン) |
1.5~5.7 |
0.012~0.045 |
乳類 |
コーヒークリーム |
11.3~31.7 |
0.011~3.4 |
乳類 |
ラクトアイス |
5.1~13.4 |
0.008~0.27 |
乳類 |
練乳 |
0.2~9.3 |
0.005~0.23 |
肉類 |
牛(ミノ) |
0.9~5.6 |
0.005~0.11 |
菓子類 |
米菓 |
0.40~34.8 |
0.003~0.62 |
油脂類 |
食用植物油 |
100 |
0.0~1.7 |
意外にも、油脂を抑え、味付けポップコーン、コンパウンドクリーム(いわゆる○○フレッシュ、○○ホイップ)がワンツーフィニッシュでした。
それから、商品にもよるのでしょうが、マーガリンよりバターの方が、トランス脂肪酸の含有率が多いのは、驚きです。やはりバターより、マーガリンの方が、体には優しいのかもしれませんね。
まとめ
パンやケーキ、洋菓子などに幅広く使用されているトランス脂肪酸ですが、WHOをはじめ、欧米諸国では、食品としての安全性に疑問を持ち、規制の対象となっています。
トランス脂肪酸を摂取し過ぎるとLDL(悪玉)コレストロールが増えて、HDL(善玉)コレストロールが増えてしまい、心臓病のリスクが高まってしまいます。
日本人は、欧米人と比べ、トランス脂肪酸の摂取量は少ないので、余程、食べ過ぎなければ、健康への影響はないと考えられています。
しかし、いくら、少量なら健康に影響がないと言われても、摂取したくない人は、いると思いますし、我々、消費者の立場からすると、少しでも、健康に影響がありそうな成分については、チェックしてから購入したいのではないでしょうか。
そもそも、食品表示にトランス脂肪酸の含有量が、記載されていなければ、自分がどれ位、摂取しているか、多いか少ないのかの判断も出来ませんので、是非、食品には、トランス脂肪酸の含有量を記載していただきたいものです。
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