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糖尿病治療におけるインスリンの単位とは?

      2016/05/19

先日、父と会話をした時に、

 

「最近、血糖値の値が低くなってきた。」

「もしかすると、インスリンを打たなくてもよくなるかもしれない」

 

と言っていました。

 

以前、父の空腹時血糖値は、ほとんどが200以上、HbA1cの値も10~12とかなり高く、いつ合併症を引き起こしてもおかしくない状態でしたので、インスリン治療を行っていました。

 

インスリン治療は、毎日、定められたタイミングで、必ず血糖値を計ってから、インスリンを注射しなければならないので、普通の薬の治療とは比べ物にならないほど面倒です。

 

注入するインスリン量は一定ではなく、直前に計った血糖値やこれから食べるもの、その後の運動量によって「単位」を変えなければならないそうです。

インスリン治療において「単位」ってとても大切なんだそうです。

ところでこのインスリンの「単位」ってなんだかご存知ですか?

 

今回はインスリンの「単位」についてお伝えしたいと思います。

 

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インスリンの単位って何?

 

なにやら、聞き慣れない言葉ですが、インスリン注射の「単位」とは、

 

「インスリン一回の投与量」

 

のことです。

 

通常、薬剤はmlやmgといった単位で表されますが、インスリンの場合は、生物学的力価である「単位」という単位で表されます。(「単位」が単位ですからややこしいですね)

 

生物学的力価とは、医薬品が一定の生物学的作用を示す量のことです。

インスリンの場合ですと、1単位を、

 

「健康な体重約2Kgのウサギを24時間絶食状態にし、そのウサギにインスリンを注射して、3 時間 以内に痙攣を起こすレベル(血糖値:約 45mg/dL)にまで血糖値を下げ得る最小の量」 (1923年 国際連盟保健機構の標準化委員会)

 

と定義されました。

 

インスリン治療をする場合、この「単位」の量を増やしたり減らしたりして血糖をコントロールします。

 

「単位」の言い回しの例ですが、

朝食前は、15単位

今回は、20単位

一日の総量が45単位

単位が合った。/合わない。

などと言うふうに使われます。

 

実は、この「単位」が結構、やっかいで、毎回同じ「単位」でいいという訳ではなく、その時々の状態に応じて「単位」を変えなければならないのです。

 

血糖値に対して「単位」がちゃんと合っていないと、「単位」不足で血糖値が下がらなかったり、逆に「単位」が多すぎて低血糖になったりしてしまうのです。

 

ですから、インスリン治療を行う際は、万一の低血糖に備えて、必ずブドウ糖を携行しておかなければならないそうです。

 

 

インスリン1単位ってどれ位の量なの?

インスリンの投与量は、「単位」で表されますが、この1単位の量(濃度)は国際基準で統一されています。

 

1単位 = 0.01mL

10単位 = 0.1 mL

100単位 = 1 mL

 

今でこそ、1単位の量(濃度)がきちんと統一されていますが、以前は、その量(濃度)は、はっきりと定められておらず、効果もバラつきがあったそうです。

 

 

インスリンの単位の歴史

インスリンの発見当初、インスリン製剤は、まだ抽出・精製技術が発達していなかったので、純度が一定でなく、効果も安定していなかったそうです。

 

その為、mgやmlなどの重量では、一定の効果の表現が出来なかったので、生物学的力価である「単位」という表現で表さなければならなかった訳です。

 

インスリンの1mgあたりの力価は、精製技術の発展と共に徐々に大きくなっていき、1925年では、8単位/mgだったものが、1987年には26単位/mgまでになっています。

 

〈インスリン国際標準品の1mgあたりの力価〉

1925年  8単位/mg(混合) 初めての国際標準品

1935年  22単位/mg(混合) 

1952年  24.5単位/mg(混合) 

1958年  24単位/mg(混合) 

1987年  26単位/mg(豚・人) 25.7単位/mg(牛)

 

〈インスリンの濃度について〉

インスリン製剤は、1mLあたり、どれくらいの単位が含まれていいるか、濃度でも表すことができ、各国で様々な濃度のインスリン製剤が作られました。

過去に遡って見てみると、

1922年 10単位/mL

1993年 20単位/mL

1924年 40単位/mL

1995年 80単位/mL

 

と、それぞれ違う濃度のインスリンが販売されおり、

長い間、

 

40単位/mL  80単位/mL

 

の2種類のインスリン製剤が同時に販売されていたそうです。

 

しかし、これですと、濃度の異なるインスリンが2種類もありますので、誤って投薬ミスをしてしまう可能性があることや、数量が10の倍数では無いので計算しにくいという意見が多数出たことを期に、ようやく2004年に、

 

100単位/mL

 

という、一つの濃度に統一することになったようです。

 

2004と言えば、それ程、昔の話ではありません。

一歩間違えると、血糖値が下がらないだけでなく、最悪、低血糖症に陥ってしまう可能性がありますので、12年前までそんな状態だったなんて考えるとちょっと恐ろしいですね。

 

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インスリン1単位はどれだけ血糖値を下げるのか?

インスリンの力価である1単位は、一体どれくらい血糖値を下げるのでしょか?

 

その答えは、残念ながら、一定であありません。

 

理由は、患者さん個々の状態によってもインスリンの効き方が異なりますし、インスリン製剤にも様々なタイプがあるからです。

当たり前といえば当たり前ですね。

ただ、目安となる計算方法がありますので、投与するインスリンの「単位」を調節する上で役立っています。

 

<伊藤の計算法(インスリンの上限20単位まで)>

・1日インスリン総量(単位) = (空腹時血糖値-20)÷10

 

・基礎インスリン量(単位) = 患者の体重÷5

※基礎インスリン量:何も食べていない時にも分泌されているインスリンの量

 

・追加インシュリン量 = 1日インスリン総量(単位)-基礎インシュリン量÷3

※毎食前の追加インスリン量を均等割では無く、3分割して、朝>夕>昼の順で配分するのが一般的です。

※追加インスリン量:食事をしたときに分泌される基礎インスリン以外のインスリン量

 

<カーボハイドレートカウンティング(炭水化物計算法)>

カーボハイドレートカウンティングとは、

 

毎食ごとの炭水化物(カーボハイドレート)の量を、

計算(カウント)して、

必要なインスリンの「単位」を決めることです。

 

この方法ですと、摂取する炭水化物に対して必要なインスリンの単位を計算して投与することが出来ます。

ちなみに、摂取する炭水化物の量は、日本糖尿病学会から出ている「食品交換表」などを参考にして計算すると簡単です。

 

まとめ

糖尿病治療において、インスリン療法は、最後の治療法と言っても過言ではありません。

 

投与するインスリンの量は、「単位」と言う聞き慣れない単位で表されます。

 

どれだけの「単位」が必要かは、摂取する炭水化物の量や食後の活動量など、その時の状況によっても「単位」数が変わってきます。

通常の飲み薬の時のように、決まった分だけ飲めば良いという訳には、いきませんのでインスリンを摂取するにしても、正しい知識が必要となります。

医師の指示をもとにするとはいえ、投与するインスリンの単位を自分で調整しなければなのは、やはり負担が大きいと感じてしまいます。

 

インスリン治療中の父には申し訳ないですが、私は、その治療方法だけには、お世話になりたくないなと、改めて思うのでした。

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 - インスリン, 治療, 血糖値